マーケティング理論 STPとは(その1)?事例を挙げてわかりやすく解説します。

マーケティングの基礎、STPについて説明します。

 

そもそもSTPとは何でしょうか?なかなか日常生活では出てこないのでイメージがつかないですね。

 

具体例を挙げながら、できるだけわかりやすくSTPについて解説していきたいと思います。

 

 

 

STPとは

 

STPとは、市場を細分化し、自社の製品やサービスの対象者を決め、そこに対して適切なアプローチを行うことを言います。

 

こうして書くと何のことやらわかりませんね。

 

 

例えばあなたが美容室の経営を考えているとします。まずどうしますか?

 

適当に家の近くの家賃の安いテナントを探して、自分好みの内装にして、とりあえず周囲の美容室と同じくらいの値段にして、店を始めますか?

 

そんな適当に経営して入れば、おそらくすぐに廃れてしまうでしょう。

 

コンビニの数よりも美容室の数は多いと言われています。適当に店を開いてビラを撒いたりSNSで発信したらお客さんが殺到してくれるほど世の中はあまくありません。

 

 

ではどのようにすればよいでしょうか?そこで活躍するのがSTPです。

 

STPとは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字です。

 

S:セグメンテーション

T:ターゲティング

P:ポジショニング

 

 

それぞれについて簡単に解説していきます。

 

 

まず セグメンテーション です。セグメンテーションとは、顧客をその属性ごとに分類することをいいます。

 

例えば美容室のお客さんになりそうな人を以下のように細分化します。

 

・おしゃれな髪形にしてとにかくモテたい大学生の女性

・安く早く髪を整えたいサラリーマン

・時間はあるので美容室でゆっくり過ごしたい専業主婦

・カットよりもセットしてほしいキャバ嬢

 

このように、一口に美容室のお客さんといっても様々なグループがありますね。

 

様々な特性をもつグループごとに顧客を細分化していくプロセスをセグメンテーションといいます。

 

 

このようにセグメンテーションを行った後に、自分の美容室ではどのグループをメインの顧客とするかを考えるプロセスを ターゲティング といいます。

 

 

セグメンテーションを細かくすればするほど、具体的にターゲティングを行うことができます。

 

例えばセグメンテーションのプレセスで「若い女性」「高齢女性」「若い男性」「高齢男性」と4つに分類し、そこから「若い女性」にターゲティングしたとします。これでは不十分です。

 

 

若い女性と言っても色んな人がいます。いつでも最先端のオシャレを楽しみたい女性、とりあえず見た目がそれなりになっていれば十分な女性、オシャレな場所は苦手だけど本当はオシャレしたい女性、とにかく男ウケする髪形にしたい女性・・・など様々です。

 

また、東京の女性と沖縄の女性とニューヨークの女性では特性が違うでしょう。

 

女子大生と女子中学生でも特性が違います。

 

 

セグメンテーションを不十分にしたまま「若い女性」とひとくくりにセグメンテーションしてそこにターゲティングしても、上手くいきません。できるだけ具体的に顧客像を思い浮かべるのです。

 

 

とりあえず今回は「時間はあるので美容室でゆっくり過ごしたい専業主婦」にターゲティングしたとしますしょう。

 

このとき、 ペルソナ を設定するとイメージがしやすくなります。

 

ペルソナとはターゲットとなる顧客の典型的なモデルのことで、詳細に人物像を設定していきます。

 

大西 恵子 (45歳)

 

恵子は千葉市に住む専業主婦。夫は東京まで総武線で通勤している年収550万円のサラリーマン。

子どもは2人、高校生1年と中学2年の男の子。どちらもサッカー部に入り、帰ってくるのは夜19時過ぎ。

決して生活が苦しいわけでもないけど、裕福なわけでもない。高級ランチを食べに都内に出ることはないけど、月に1回友達と駅前のデパートでランチをするのが楽しみ。

朝はあわただしく夫と子供を送り出して、掃除や洗濯をしたら後は自由時間。ワイドショーを見たりSNSをみたり。

暇だしそろそろ髪も伸びてきた美から美容室でも行こうかな。オシャレして誰かに会うわけでもないし、無難にいつも通りの髪形にしてくれればいいや。

それにしてももう45歳か。いつまでも若くありたいけどなかなかねぇ。

 

顧客像のイメージがぐっとしやすくなったと思います。

 

 

 

最後のプロセスは ポジショニング です。

 

ポジショニングとは、ターゲティングした顧客層に対してどのように自分の立ち位置を決めて顧客にアプローチするかを考えるプロセスです。

 

「時間はあるので美容室でゆっくり過ごしたい専業主婦」にターゲティングしたのに、歌舞伎町のど真ん中で深夜に美容室をオープンしても仕方がありません。

 

大西恵子が来たくなるような店を作るのです。

 

例えば買い物の前に寄れるように商店街の中に、家賃の安いビルの2階にテナントを借りる。その分値段を安くする。コーヒーを出してくつろげる空間を作る。白髪染めや髪のエイジングケアメニューを充実させる。といったことがポジショニングの手法として考えられます。

 

主婦にSNSで広告を打つならInstagramよりもFacebookです。逆に10代をターゲットにするならFacebookよりもInstagramに力を入れた方がよいでしょう。

 

こうしてターゲットに合う美容室を作り上げていくのです。

 

 

新しく店を始める、新商品を販売する、こういったときにSTPをきちんと行っていないと、非常にぼやけた商品になってしまいます。

 

 

ピンクの車を作るな?

 

マーケティングの有名な例え話で「ピンクの車を作るな」という言葉があります。

 

車を欲しい人が100人いて、そのうち50人は白い車が欲しい。残りの50人は赤い車が欲しい。

 

このとき、どちらのニーズも満たすように白と赤の中間色であるピンクの車を作ってしまうと1台も売れないという話です。

 

二兎を追う者は一兎をも得ず。

 

消費者の色んな声を反映させた最小公倍数的な商品を作ると、誰にも響かない商品になってしまうのです。

 

男性も女性も若者も高齢者もみーんなターゲットにしたような美容室は、誰にも刺さりません。

 

 

 

STPの失敗事例

 

ひとつ、STPの失敗事例を紹介します。

 

 

数年前、コロ助の家の近所に高級食パンの店が出店しました。

 

1斤500円くらいの食パンで、「焼きたて&無添加小麦」をウリにしているようです。総菜パンなどは一切置かず、食パンだけ売っているパン屋です。

 

この高級食パン屋、非常に微妙でした。

 

 

まず立地が微妙です。普通の庶民が住む住宅街で、金持ちが住んでいるニオイはありません。ビジネス街でもないので、金を持ったビジネスマンが仕事帰りに高級食パンを買っていくというシチュエーションも考えられません。

 

また子育て世帯が多い地域なのですが、18時に店が閉まってしまいます。共働きの家庭は購入できません。

 

しかも立地がフィリピンパブの隣です。高級食パンのイメージとはかけ離れた立地です。

 

店の中にイートインスペースがありました。食パンしか売ってないにも関わらずです。食パン一斤、その場で食べることってありえますか?

 

イートインスペースはなくていいのでもっと狭いテナントを借りて、固定費を削減できたはずです。

 

食パンを2斤買ったら1斤プレゼント、という企画をしょっちゅうやっていました。おそらく売れ残った在庫の処理でしょう。

 

しかしこうした企画をすることで高級食パンのブランド価値が下がり、そもそも賞味期限の短い食パン3斤も食べきれません。

 

 

この高級食パン屋は1年ちょっとで潰れました。最後の方は迷走してなぜかソフトクリームも売り始めてました。

 

高級食パンという商品を売りたいときに、どのセグメントに対してターゲティングしポジショニングをしていくのかが明確になっていなかったために失敗した事例と言えるでしょう。

 

 

次回はセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングに対してもう少し詳しく解説してみたいと思います。

 

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

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