マーケティング理論 STPとは(その2)?事例を挙げてわかりやすく解説します。
前回はマーケティングの基礎としてSTPについての記事を書きました。
今回はそのSTPについてもう少し深掘りしていこうと思います。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、顧客を細分化してその属性ごとに分類することを言います。
しかし「顧客を細分化する」といっても何からどう始めていいかわかりません。そこで典型的な細分化の方法を紹介します。
地理的変数(ジオグラフィックセグメンテーション)
顧客を地理的に分類する方法です。
都道府県、市町村、国内、海外などによって顧客を分類します。
地理的変数を使ったセグメンテーションの利点は、客観的なデータの収集がしやすいところです。
例えばあなたが新たに50歳以上の独身者向けに結婚相談所を開業したいと考えているとします。
どこに住んでいる人にターゲティングしたらよいでしょうか?
例えば国立社会保障・人口問題研究所のサイトで都道府県別の生涯未婚率のデータを取得できます。
これを見ると、関東では東京の生涯未婚率が高く、千葉は低いことがわかります。
地理的変数により分類すれば、
東京都民:未婚率が高い
千葉県民:未婚率が低い
ということになり、東京都民にターゲティングした方がよいことがわかります。
飲食店、美容室、映画館、コンビニといったローテクなサービス業(サービスを受けるためにはその場に行く必要がある業種)であれば、特にこの地理的変数によるセグメンテーションは非常に重要になります。
デモグラフィック変数
顧客を性別や年齢、家族構成、学歴、職業、所得といった人口学的・社会的な切り口から分類する方法です。
化粧品を作るとき、男性と女性でニーズは異なるでしょう。
飲食店を始めるとき、顧客の家族構成でニーズは異なります。
就職支援サイトを立ち上げるとき、学歴によってニーズが異なるかもしれません。
デモグラフィック変数により顧客を分類することで、男性向けの化粧品を作ろう、ファミリー向けのレストランを作ろう、理系大学院卒のための就活サイトを作ろう、というようにターゲティングしていくことが可能となります。
サイコグラフィック変数
顧客を性格、価値観、ライフスタイル、思考といった心理的な違いにより細分化する方法です。
同じ東京都に住んでいる25歳独身大学卒年収400万円の男性でも、A君とB君で同じ考えを持っているとは限りません。
A君はとりあえず腹がいっぱいになる安くてうまい店を好む。
B君は健康志向で高くてもいい素材を使った店に行きたい。
こんな違いがあるかもしれません。
サイコグラフィック変数では、こうして個々人のパーソナリティに基づいて顧客を分類します。
例えば無印良品などは「シンプルなものを好む」というサイコグラフィック変数に基づいて分類された顧客層にターゲティングしたブランドといえるかもしれません。
行動変数
行動変数は、製品やサービスに対する顧客の使用目的や使用率、使用者のタイプによって顧客を分類するものです。
新しいパソコンを開発するとします。
そのパソコンの顧客層を行動変数によってセグメンテーションすると、こうなります。
- 動画編集をしたいユーザー
- インターネットサーフィンをしたいユーザー
- ワードやエクセルを使いたいユーザー
- プログラミングをしたいユーザー
- 出張先にも持ち運びしたいユーザー
- 一日10時間は外出先で使用するユーザー
- 週末に3時間だけ使いたいユーザー
このように使用目的や使用率によって顧客を分類していきます。
使用者のタイプとは、例えば新規ユーザー、既存ユーザー、過去のユーザーといった分類です。
例えば観光地にある飲食店はひたすら新規ユーザーをターゲットとしていますし、会員制のバーなどは既存ユーザーをターゲットにしています。
ターゲティング
セグメンテーションにより市場を細分化したあと、自社の製品はどのセグメントに対して注視していくかを考えるプロセスをターゲティングといいます。
まず、セグメンテーションを行ったことによって市場を分析することができました。そこから色んなことが発見できるはずです。
例えばセグメンテーションを行ったことにより市場の隙間を見つけることができるかもしれません。
A社の商品は若年男性、B社の商品は高齢男性、C社の商品は若年女性をターゲットにしている。あれ、高齢女性をターゲットにしている商品ってまだ世の中にないんじゃないの?
こうした分析により市場でまだ満たされていないニーズを探し出す手助けとなり、自社のターゲットとする方向性を定めるきっかけとなります。
ターゲティングをするときにしてはいけないことは、なんとなく直感的に決めてしまうことです。
タピオカ?若い女性がターゲットだよね。若い女性が多い原宿に店を出せばいけるでしょ。
こんなことは誰でも思いつくので、すでに市場はレッドオーシャンです。きちんと分析をしてターゲティングをする必要があります。
またターゲティングをする際の注意点として、リーチ可能かどうかという点があります。
せっかくターゲットを定めても、その顧客にリーチ(アプローチ)できなければ意味がありません。
例えば和菓子屋さんを始めるとき、高所得の外国人というターゲットをした高級和菓子屋を考えたとします。
このとき、麻布や広尾に店を構えれば高所得の外国人にリーチできるでしょう。
しかしピンク色が好きな人というターゲティングをして、ピンク一色の和菓子屋を考えたとします。
このとき、ピンクが好きな人がどこに住んでいるのか、何歳くらいの人が多いのか、いまいち認知することができません。
こうしたターゲティングをすると潜在顧客に対して効果的にリーチすることが難しく、上手くいかないことがあります。
しかし最近ではオンラインによるマーケティングデータの活用により、こうした問題は解決されつつあります。
例えばオンラインでピンクの商品を買ったユーザーを追跡し、そのユーザーに対して広告を打つことも可能かもしれません。
また当然ですが、自身の好みや強みも考慮しなくてはいけません。
和食レストランを開業するときに地理的セグメンテーションに基づいてベトナムに商機を見出してターゲティングしたとしても、自身がベトナム語もできずに現地に仕入れのコネもない状態では成功できません。
マルチセグメント
必ずしも1つのセグメントに対してのみターゲティングしなければいけないというわけではありません。
例えばドトールコーヒーとエクセルシオールは同じ企業が経営しています。
ドトールは安価なコーヒーショップ、エクセルシオールは少し高級なカフェというイメージでしょうか。
それぞれターゲットとしているセグメントも違います。
こうした複数のセグメント(マルチセグメント)に対してターゲティングを行う場合に注意すべき点は以下のブランドイメージの維持とカニバリズムです。
ブランドイメージの維持
同じコーヒーショップの中でマルチセグメントに対してターゲティングしてしまうと、どんな店なのかぼやけてしまいます。
前回ピンクの車を作ってはいけないという話をしましたが、まさにそういった状態に陥ってしまいます。
これを防ぐためにはブランドを分けることです。
ドトールコーヒーとエクセルシオールカフェのように別の名前でそれぞれ違ったセグメントに対してターゲティングを行うことで、焦点がぼやけることを防ぎます。
カニバリズム(共食い)
カニバリズムとはお互いの顧客をお互いが食いつぶしてしまうことをいいます。
ドトールコーヒーとエクセルシオールカフェが競合してお互いの顧客を取り合ったとしても、企業の利益は向上しません。
お互いのターゲットを明確にし、可能な限りお客の顧客がかち合わないようなポジショニングを行うことが大切です。
ポジショニング
ポジショニングとは、その名の通り「位置づけ」です。
顧客の心の中で自身の商品やサービスをどのように位置づけてもらうか、そのための作業をポジショニングといいます。
ターゲットとなる顧客に対して一言で自身の商品のイメージや特徴を言い表せることが重要です。
慶應の学生の大盛ラーメンといえば、ラーメン二郎。
慶應の学生×大盛ラーメンといえばラーメン二郎とすぐに頭に浮かびます。これはラーメン二郎のポジショニングがうまくいっているためです。
メタボの人でも理想的な肉体が手に入るトレーニングといえば、ライザップ。
ひとりでゆっくり食べる博多ラーメンといえば、一蘭。
港区女子のための情報誌といえば、東京カレンダー。
商品内容、広告、店構え、価格。こういったものをターゲットとなる顧客に対して響くように作り上げ、顧客の心に自社の商品を位置づける。
この作業がポジショニングです。
- 鳥谷コロ助
へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。