マーケティング理論 4P戦略とは?事例を挙げてわかりやすく解説します。
マーケティングの基本である4P戦略について解説します。
4P戦略とは?なんの略?どうやって使うの?具体例は?
できるだけわかりやすく解説したいと思います。
4P戦略とは
4P戦略とは以下の4つのPをいいます。
Product 製品戦略
Price 価格戦略
Place 流通戦略
Promotion プロモーション戦略
以前マーケティングにおけるSTPについての記事を書きました。
STPでは自社のターゲットとする顧客をどんな層にするかを決定しました。
4P戦略では、このターゲット顧客に対してどのような製品を(Product)、いくらで(Price)、どこで(Place)、どうやって宣伝して(Promotion)売っていくかを考えるプロセスです。
せっかくターゲットを設定しても、この4P戦略をオロソカにするとモノは売れません。
4P戦略は自社のターゲットに対して自身の製品やサービスを適切に届けるためのプロセスです。
製品戦略(Product)
何を作るのか。どんなサービスを提供するのか。これを戦略的に考えるのが製品戦略です。ターゲットとする顧客に刺さる商品を開発していきます。
新しい製品やサービスのアイディアを出すとき、 プロダクトアウト と マーケットイン という考え方があります。
プロダクトアウトは自分の作りたいもの、作れるものにフォーカスして製品を開発する手法をいいます。技術力に自信のある人、どうしても自分の好きな商品を売っていきたい人、こんな人はプロダクトアウトの手法で製品を作り出していきます。
極端な例でいえば、「俺は麦茶に砂糖を入れたのが大好きだ」といって、その商品にどの程度のニーズがあるのかも調べずに砂糖入り麦茶カフェを開いたりするようなものです。
それに対してマーケットインは顧客のニーズや調査して、そのニーズを満たすような商品を開発する手法をいいます。ターゲットとする顧客層に対してアンケートをしてどのような製品が欲しいのかを分析してもよいでしょう。
「試食会をしたら塩ラーメンより醤油ラーメンの方が人気があった」という分析結果から、醤油ラーメン屋を開くようなアプローチです。
その昔はプロダクトアウトによる製品開発が主流でした。フォードのモデルT(1900年代前半の超むかーしの自動車)などは20年近くもモデルチェンジをせず、同じ製品を売り続けました。今ほど顧客のニーズが多様化しておらず、また経済成長のもとでモノを作れば作っただけ売れた時代もあったのです。
しかし時代がかわり、日本ではバブルがはじけ「失われたウン十年」の時代がきます。消費者の目は厳しくなり、本当に欲しいものしか買わなくなります。また世の中が成熟し様々な製品が世にあふれ、消費者のニーズも多様化していきます。そうした消費者のニーズに応えるため、マーケットインのアプローチが必要となってきました。
それなりの規模の企業であれば、市場のニーズ調査もせずに自分の作りたいモノを作るということはほぼないとも言えるでしょう。
しかし必ずしもプロダクトアウトのアプローチが間違っているとは言い切れません。それは顧客は必ずしも自身のニーズを正しく把握していないという事実があるからです。
例えば2006年の携帯電話に関するこちらのアンケート調査によると、携帯電話でどんな機能が欲しいですか?という問いに対して
1位 テレビ電話
2位 おサイフケータイ
4位 GPS機能
5位 高画質のカメラ
というアンケート結果でした。
しかしこれらが一切搭載されていなかったにバカ売れしたのが、翌2007年に発売されたiPhoneです。
このようにプロダクトアウトからはこれまで消費者が想定もしていなかったイノベーティブな商品がでてくる可能性もあります。
亀田の柿の種専用ふりかけマシンという商品がこの世にはあります。マーケットインからは絶対に出てこない発想です。
価格戦略(Price)
価格は消費者が商品を購入する上で非常に重要な要素です。
しかし価格はどのように決めるべきなのでしょうか。
単に原価+利益=販売価格というような価格の決め方は適切なのでしょうか。
そうではありません。価格の設定の意図を持ってなされるべきであり、適当に決めるものではありません。
様々な価格設定の仕方、価格が消費者に与える印象について説明していきます。
上澄み価格(スキミングプライス)
最初は価格を高く設定し、徐々に価格を下げてシェア拡大を目指す方法です。
このスキミングプライスの戦略に向いているのは革新的な商品です。
世の中にはイノベーターと呼ばれる「新しい物好きの人たち」がいます。大体世の中の人の3%くらいがイノベーターと言われています。
この人たちは、新しくて革新的なものであれば高くても喜んで購入します。そして誰よりも早く手に入れたいと思っています。
iphoneやドラゴンクエストが発売されたときに前日から並んで買うような人たちです。
まずこうしたイノベーターに高い値段で買ってもらい早い段階での初期投資回収を目指し、その後徐々に値段を下げて市場浸透を行っていきます。
浸透価格(ペネトレーションプライス)
スキミングプライスとは逆の方法です。
新商品として世の中に出ていく段階では価格を安く設定してシェア拡大を目指し、その後中長期的に価格を上げていく方法です。
この方法は使ってみないとなかなかその品質の差がわからないような商品でよく使われます。
まずは価格で釣ってお客さんに購入してもらって自社の製品を使ってもらい、品質の良さを知ってもらいます。品質の良ささえ知ってもらえれば値上げ後もユーザーはついてきてくれるでしょう。
ネットフリックスは日本で導入された2015年当初のスタンダードプランの月額料金は950円でしたが、2018年に1200円に値上げしました。
アメリカではすでに5回の値上げが行われているようです(2020年5月現在)。
まずは安い価格で市場へ浸透していき、徐々に値段を上げていっています。
ここで急に価格を上げすぎたり、もともと品質が良くなく価格だけがユーザーのメリットだった場合など、値上げのタイミングで多くのユーザーが離反する恐れがあります。
もともと浸透価格戦略は「最初は利益度外視、後から採算をとる」という戦略であるため、値上げのタイミングや上げ幅を誤ると大損害になるため、リスクの高い戦略ともいえます。
Everyday low price(ELP)
いつでも安い価格で商品を提供する戦略です。
普通のスーパーなどが行っているセールなどは行わず、いつでも自社が許容可能な最低価格での提供を目指します。
こうすることで特売のチラシなどを作成する費用を不要にすることができ、また顧客の信頼感を集める効果があります。
基本的に薄利多売のビジネスモデルとなります。
業務スーパーや100円ショップ、アメリカではウォルマートなどがこの戦略をとっていると言えるでしょう。
製品ライン価格
それぞれの製品に異なる価格をつけ、顧客にイメージを植え付ける方法です。
例えばジャケットを売る場合、
A:45,000円
B:20,000円
C:12,000円
という3つの商品があった場合、Aは高級品、Cはお買い得というイメージを持つと思います。
このとき、お店が本当に買わせたい商品はBのジャケットです。
店の入り口にCのジャケットを置いておきます。安いジャケットにつられてお客さんは店に入ります。
その後にAのジャケットを展示します。お客さんは「ここは結構いいジャケットも置いてあるな」と感じます。
その後にBのジャケットを見るとちょうどよい具合に感じ、お客さんはBを選びます。
このように真ん中をつい選んでしまう消費者の心理をゴルディロックス効果といいます。
リーダー価格
目玉商品として採算割れ覚悟の価格に設定する方法です。
例えば居酒屋でビール1杯100円にすると、それを目当てにしたお客さんが殺到します。
しかしこうしたお客さんはビールだけを注文するのなく、唐揚げや刺身やサラダもいっしょに頼むでしょう。
ビールだけ飲んで帰られてしまうと採算が合わないのですが、これを目玉商品としてトータルで収支を取る方法です。
この方法は居酒屋やスーパーマーケットなど、いくつかの商品をまとめて購買するような店でしか使えません。
洋服屋さん屋さんや自動車ディーラーなどでやると、普通の目玉商品だけ買われておしまいになってしまいます。
キャプティブ価格
まずベースとなる商品を安価に設定して買ってもらい、その後に付属品を販売して儲ける方法です。
ゲームの本体を安く売ってソフトで儲ける。プリンターを安く買ってもらってインクで儲ける。
ネットサービスでプラットフォームを無料で開放して追加サービスで儲けたりする方法もあるかもしれません。
これを悪用したのがぼったくりバーです。
安いセット料金を設定して顧客を店に呼び入れ、キャストの(法外な)飲み物代や(謎の)サービスチャージなどで儲けます。
ちなみにキャプティブとは捕虜という意味です。ぼったくりバーにぴったりのネーミングですね。
オッドプライシング
価格を半端な数字にしてお得感を感じさせる方法です。
例えば3,000円の商品よりも2,980円の商品の方が、お客さんはお得に感じます。いや、実際に20円お得なんですけど、それ以上にお得に感じてしまいます。
コロ助の個人的な感想としてはこの価格設定はあんまり好きじゃないです。
特に楽天市場とかでTシャツを買うとき、安くてチャチい商品を避けたくて下限価格を3,000円以上、とかに設定して商品検索することがあるんですよ。
このとき、2,980円の商品ってこの下限価格ではじかれて表示されなくなっちゃいますよね。これってちょっと勿体なくないですか?
逆に「2,980円以下」って設定して商品検索する人はいないと思うので、3,000円の商品がはじかれることはありません。
ピーク・オフピーク価格
混んでいるときと空いているときに価格差を設定し、需要を均一化させる方法です。
例えば航空券のチケット、空いているシーズンとゴールデンウィークの価格では大きな差があります。
映画館の平日割引などもこういった価格設定を行っています。
こういう価格設定に向いているのは固定費ビジネスです。
すなわち、空いていようが混んでいようが1回飛行機を飛ばすのにかかるコストはあまり変わりません。
映画館も、空いていようが混んでいようが1回上映するためのコストはほとんど同じ。
こういうビジネスにおいて、空席を作るくらいなら安くしてでも席を埋めた方が店側はお得になるためピーク・オフピーク価格が設定されることとなります。
また最近ではダイナミックプライシングという、機械学習により需要予測を行い自動で価格を随時変動させるシステムを導入しているところもあります。楽天イーグルスの観戦チケットがそうですね。
価格の弾力性を利用した価格設定
価格の弾力性とは、価格の変化によってどれだけ需要量が変化するかをその割合を示したものです。
例を挙げます。
価格が1000円のTシャツがあり、1週間に100枚売れるとします。
このTシャツの価格を1500円に引き上げたところ、1週間に80枚売れました。
価格は50%上昇し、需要は20%減少しました。
このとき、このTシャツの弾力性 = 需要の変化率/価格の変化率 = 20%/50% = 40%
と計算します。
この数字が高いほど価格変化に敏感な商品(価格が高くなれば需要量が減少しやすく、価格が下がれば需要量が増加しやすい)となり、低ければ価格変化に鈍感な商品(価格が上がっても下がってもあまり需要量は変わらない)となります。
この価格弾力性を利用した商品の価格設定を行うことがあります。例えば
- ペットボトルのお茶500ml 1本 100円
- ペットボトルのお茶500ml 12本セット 400円
こんな商品が並んでいることがあります。
普通でしたら1本100円のお茶が12本であれば1,200円。まとめ買いということでちょっと割り引いても1,000円くらいが妥当に思えますよね?なぜこのような価格になるのでしょうか?
答えは、価格弾力性の違いです。
ペットボトルのお茶1本より、12本セットの方が弾力性が高いのです。
つまり、このそれぞれの主な顧客層を考えたときに
- ペットボトル1本のお茶を買うお客さん →外出先で、今のどが渇いている人。
- ペットボトル12本セットのお茶を買うお客さん →家にストックする買い置きを買いに来る人
となります。
外出先でのどが渇いている人は、今すぐにお茶を飲みたいはずです。そんなときに、お店をいくつも回って一番安いところで買うという購買行動はあまり行いません。近くの店でたまたま目についたお茶を購入します。
そのとき、値段はあまり見ません。他店よりちょっと高くても比較することなく買ってしまうでしょう。
また、いくら割安だからと言って外出先で12本入りのお茶は買いません。かさばるので。
つまり、1本のお茶は価格弾力性が低い商品と言えます。そのため強気の価格設定が可能です。
本当は1本40円で売っても利益は出るんですが、100円に価格を引き上げてもあんまり販売数に差が出ないので、100円で売った方が店は得なのです。
一方で家にストックしておくためのお茶を買う人は違います。買い物に出かける前に「お茶の買い置きをするなら安い店で買おう」と考えます。その結果、他店より価格が高いと売れなくなってしまいます。つまり、価格弾力性が高い商品と言えます。
そのため他店との競争により、価格を下げざるを得ません。
このように、ペットボトルのお茶の価格設定は価格の弾力性によって説明をすることが可能です。
流通戦略(Place)
流通戦略とは、自身の製品をどのようにして顧客の手に届けるかを考える戦略です。
小売店を通して販売したり、直接訪問販売をしたり、ネット販売をしたり。
どんな流通経路で売るかによって、それぞれ商品の印象が変わってきます。
同じTシャツを2000円で売るにしても、コンビニで売ったときは安っぽく見えデパートで売れば良く見えるかもしれません。
1枚100万円の絵が銀座の画廊で売っていればいい絵なんだなと思いますが、メルカリで売っていたら怪しさ満点です。
それぞれの商品にはそれに適した流通経路があります。
一般的に、流通経路が少なくなるほどコストが安くなり、価格を安く設定することができるはずです。
- 製造者 → 消費者
- 製造者 → 卸売店 → 小売店 → 消費者
という流通経路があったとき、後者のほうがコストがかかります。
それでも流通業者を入れるメリットは、生産者と消費者のさまざまな不一致を解消するためです。
- 場所の不一致:生産者のところまで消費者が買いに行くのは大変
- 種類の不一致:生産者は限られた種類の商品しか扱わないが、消費者は様々なメーカーの商品を比べたい
- 時間の不一致:生産者は効率を考え一括生産をするが、消費者は24時間、365日買いたい
間に流通業者が入ることで、こういった様々な不一致を解消します。
しかし近年はオンライン販売が浸透してきており、この流通業者の役割が変化してきていることは間違いありません。
単に商品を販売する場所という機能から、商品を体験する場所、買い物という体験を楽しむ場所といったことが重視されるようになっています。
IKEAの店舗など、行くだけでワクワクしますよね?
逆に言うとそうした付加価値を提供できない店舗はだんだん生き残りが難しくなるでしょう。
プロモーション戦略
プロモーションとは販促活動全般を言います。「どうやって売るのか」を考える戦略です。
具体的なプロモーション方法については日進月歩で、常に進化しています。
昔はテレビ、新聞、雑誌、看板などが広告の主体でしたが、インターネットやSNS、Youtubeなどの発達でその方法は多様化しました。
2019年は初めてネットがテレビを広告費で超えた年となりました。
最前線で働くマーケターたちのブログを見ると、様々な手法が紹介されていると思います。
プロモーションでもっとも重要なことは、すべてのプロモーションは一貫性がないといけないということです。
実際に様々なプロモーション活動をする際に、それぞれの広告で異なるメッセージを伝えていてはいけません。
ハーゲンダッツのプロモーションを考えてみます。
ハーゲンダッツのイメージは「高級」「至福」ということで統一されています。
これはハーゲンダッツのプロモーションで、一貫してこのメッセージを発信しているからです。
おしゃれなCM、マリオットホテルとのコラボ企画、柴咲コウや中条あやみといったキャラクターの起用。「高級」「至福」といったメッセージからぶれていません。
逆に「割引券をばらまく」「CMにおバカタレントを起用する」といったような高級感を損なうプロモーションを行うべきではありません。
あえてブランドイメージを転換したいときなどにはアリかもしれませんが、王道のプロモーションとはいえないでしょう。
- 鳥谷コロ助
へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。