エフェクチュエーションの5原則を分かりやすく解説します

エフェクチュエーションの5原則(Five Principles of Effectuation)とはなんでしょうか。事例を挙げながらわかりやすく解説します。

 

 

エフェクチュエーションとは?

 

エフェクチュエーションとは業界や地域、時期などに関わらず、成功した起業家たちに共通して見られるロジックのことをいいます。これから新たにビジネスを始めるにあたって、何の根拠もなくやみくもに始めても上手く行くとは限りません。日本においては新規企業の50%が3年以内に廃業すると言われており、生存競争の厳しさが伺えます。

 

自身で起業する際に生存率を少しでも上げるために、過去の起業家に共通する理論を学んでおくことは決してマイナスにはならないでしょう。

 

このエフェクチュエーションにおける5原則を紹介します。

 

 

Bird-in-Hand principle

 

直訳すると「手の中の鳥理論」です。これは一言でいうと「すでに自分が持っている資源を使って起業しましょう」という意味です。

 

例えば自分はすでに会計の知識を持っているので会計士として独立しよう。食品メーカーの知り合いがたくさんいるから食品卸業をやってみよう。このようにすでに自分が持っている能力や知識、知っている人などを巻き込んだ起業は成功しやすい傾向にあります。

 

逆にもし何らかの素晴らしい新規ビジネス案を考え付いたとしても、そのビジネス案が自分の興味や能力、知識とは関係がなく、また知り合いにもそういったことが得意な人がいない場合、そのアイディアがどんなに素晴らしくても成功は難しいかもしれません。

 

まず起業するときはWho I am (自分は何者か) / What I know (自分は何を知っているか) / Who I know (誰を知っているか) について分析します。これらを分析して得られる「すでに自分が持っている資源」のことをMeansと呼びます。

 

起業する際は「まずゴールを決めてその達成には何が必要か」と考えるよりも、「自分の持っているMeansを使ってどのようなゴールを設定するか」と考えた方が成功する可能性が高いと言えます。

 

 

Affordable Loss principle

 

直訳すると「許容可能な損失理論」です。

 

新しく会社を立ち上げるということにはリスクが伴います。必ずしも成功が約束されたものではありません。失敗したときは様々なものを失う可能性があるでしょう。

 

敷金礼金と厨房機器など3,000万円の初期費用を投資して飲食店を開業したとします。もしお客さんが全く来ずにそのまま廃業となってしまった場合、この3,000万円は失ってしまいます。また時間も失ったことになります。その間に別の仕事をしていれば得られたであろう収入を機会損失として考えることができるでしょう。

 

この3,000万円およびかかった時間など、ビジネスが成功しなかった場合には起業家は多くのものを失います。この損失をあらかじめ許容可能な範囲に抑えておくことが大事です。

 

どこまでの損失が許容できるかどうかは、個々人の資産状況やリスク愛好度にもよって変わってきます。上記の例の場合「3,000万円を失ってもこのビジネスを立ち上げたいのか」と起業前に自身に問いかける必要があります。

 

もしビジネスに失敗したときに許容できないほどの損失額を出してしまう可能性があるようなビジネスは避けなくてはいけません。その場合、「万が一にも失敗できない」というインセンティブが働きアグレッシブな意思決定が難しくなり、結果としてビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。

 

 

Crazy Quilt principle

 

Quiltとはあの布地のキルトのことです。様々な柄のキルトをパッチワークでつないでいくかのごとく、様々な人を巻き込んで柔軟にビジネスを展開していくほど上手くいく傾向にあります。これをクレイジーキルトの原則といいます。

 

パズルはあらかじめ絵柄が決まっていて、それを完成されるためにあらかじめ決められたピースを組み合わせていきます。一方でキルトのパッチワークの場合、完成系の絵柄が初めから決まっているわけではありせん。ビジネスはパズルではなくキルトパッチワークのように行っていく方が良いのです。

 

南場智子氏が立ち上げたDeNAは、創業当時はEコマースの専業会社でした。しかしそれだけでは他社との差別化が難しく、事業がうまく行きませんでした。その後試行錯誤を重ね、メンバーたちの様々なアイディアを巻き込みながら異なる事業をどんどん追加し、変化し続けていました。

 

このようにあらかじめゴールをきっちり決めすぎるのではなく、色んな人を巻き込んで絶えず変化していくことが重要です。

 

「人を巻き込んでいく」というのは特に共同経営者や社員に限ったことではありません。調達先や顧客、あるいはライバル企業など、あらゆる人を自分のビジネスに巻き込んでクレイジーなキルトを作りましょう。

 

 

Lemonade principle

 

レモネードの原則です。

 

レモンとは欧米ではスラングで「欠陥品」「役に立たない」という意味があります。レモンは酸っぱくて食べれたものではないことから来た意味でしょう。しかしレモンも氷砂糖と蜂蜜に漬けて炭酸水で割ればおいしいレモネードになります。

 

このように、一見悪いものや失敗したものをうまくチャンスに変えてしまうような発想が成功する起業家には求められます。思いがけない出来事、思いがけない状況の変化、思いがけない人との出会い。こうした不測の事態をポジティブな方向性に転換させます。

 

 

皆さんご存じのポストイット、あれも実は失敗作から生まれた商品です。スリーエムの研究者であるスペンサー・シルバーは、粘着力の強い接着剤の開発を行っていましたが、どうしてもうまく行きませんでした。その失敗の中から生まれたのが「すぐくっつくがすぐはがれてしまう」という特性を持つ接着剤です。

 

これを「しおりに塗って使ったら、本からしおりが落ちずに良いのではないか」と同僚のアート・フライがアイディアを出します。こうして開発されたポストイットは今や世界中で多くの人に使用されています。

 

 

Pilot in the plane principle

 

pilot

 

飛行機の中のパイロットの原則です。パイロットは操縦かんを握り、計器を確認し、急な悪天候などといった環境の変化に備えて絶えず準備をしています。パイロットは悪天候を変えることはできませんが、周りの環境に合わせて飛行機を操縦していくことはできます。

 

ビジネスもこれと同じです。環境の変化を注意深く観察し、場合によってはビジネスの軌道修正をしていかなくてはなりません。環境は常に変化しています。操縦かんを手放さず、自分でコントロールできる範囲で環境に適応していく努力をしていかなくてはなりません。

 

2020年6月現在、新型コロナウイルスの影響で外食が下火になり、多くの飲食店が苦しんでいます。開店当初は「住宅街で主婦向けのランチのお店を開こう。単価は〇〇円くらいで、知り合いの有機農家から野菜を仕入れて、小さい子連れでも対応できるようにお子様椅子も用意したり授乳室も用意して・・・」というように綿密な計画を立てていたとしても、コロナ流行という外部環境の変化により状況は一変します。

 

ここで「コロナは自分の力ではどうしようもない。このままでは潰れるしかない」と思ってしまってはいけません。テイクアウトをはじめるのか、レシピ動画を公開して材料を宅配するのか、小さい子供がいて外出できない主婦向けに家から参加できるオンライン料理教室を開くのか。外部環境の変化に合わせて、パイロットは責任を持って飛行機を操縦しつづけなければいけません。

 

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

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