新規ビジネスのアイデア発想フレームワーク【固定費への貢献】

元マッキンゼー、現ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏の著書『発想力:「0から1」を生み出す15の方法』(小学館新書: 2018)において、ビジネスにおいて新しい発想を行う際の様々な「型」が紹介されています。今日はその中のひとつである「固定費への貢献(Contribution to The Fixed Cost)」について紹介します。

 

 

 

固定費への貢献とは

 

固定費への貢献とは、空いている施設などを遊ばせることなく稼働させることで利益を生むビジネスモデルです。

 

この固定費への貢献を考えるにあたり、まずは限界利益という言葉を知っておく必要があります。

 

利益=売上-費用

 

として計算されますが、この費用は固定費と変動費に分解されます。固定費とは家賃のように売上とは無関係に一定額がかかる費用、変動費とは原材料費のように売上に比例してかかる費用のことを言います。

 

利益=売上―変動費―固定費

 

ここで、限界とは「売上とは変動費を差し引いたもの」と定義されます。例えば1個80万円で仕入れた商品を100万円で売った場合、限界利益は20万円となります。

 

利益=限界利益―固定費

 

もし上記の場合で毎月の固定費が200万円かかっていた場合、商品を1個販売した時は限界利益が20万円となり180万円の赤字。2個販売した時は限界利益が40万円となり160万円の赤字。3個販売したは限界利益が60万円となり140万円の赤字・・・。このように限界利益を積み上げていき、これが200万円という固定費を超えたときに利益が発生するようになります。つまり利益を上げるということはいかにして固定費以上の限界利益を稼ぐのかということになります。

 

 

ここで、変動費がほとんどかからないビジネスを考えてみましょう。あなたが個人で映画上映のイベントを主催するとします。上映会場や機材を借り、お客さんを集めます。会場の最大キャパシティは100人です。

 

かかる費用は以下のようなものと仮定します。

 

・会場使用料 10万円

・機材使用料 2万円

・ジュース 100円/人

 

 

チケット代金は1人あたり2000円(ジュース代込)と設定しました。

 

 

このとき、会場使用料の10万円と機材使用料の2万円は固定費です。お客さんの込み具合に関わらず、この12万円は必ずかかります。

 

一方でジュース代の100円は変動費です。お客さんが1人くるたびに、近くの自販機で100円のジュースを買って渡します。お客さんが1人も来なければ0円。100人来れば1万円かかります。

 

限界利益=売上―変動費でした。そのため2000(チケット代)-100(ジュース代)=1,900円がお客さん1人あたりの限界利益です。これが固定費である12万円を超えるときに利益が発生します。つまり120,000÷1,900=63.16となり、お客さんが64人以上入れば利益が出るビジネスということになります。

 

 

ここで本題の「固定費への貢献」の話です。チケットを販売開始してしばらく経ちましたが、売れ行きが芳しくありません。あと上映まで1時間を切りましたが、まだ50枚しか売れていません。このままでは赤字になってしまいます。このときあなたはどうするべきでしょうか。

 

1つの方法としては、チケットを値引きすることが考えられます。先ほど書いたように、利益を上げるということは「固定費以上の限界利益を稼ぐ」ということです。空席のままでは限界利益はゼロですが、チケットを半額にして1000円で売れば限界利益は900円出ます。つまり空席を作るよりも半額でチケットを売った方が「900円分固定費に貢献」することができるのです。これが固定費への貢献の考え方です。

 

この状況下では、チケットを101円まで値下げしたとしてもまだ限界利益はプラス(101円-100円=+1円)となるため、空席を作るよりも固定費に貢献ができている、と考えられます。

 

一方でチケットを99円まで値下げしてしまうと限界利益がマイナス(99円-100円=-1円)となってしまうため、それならばまだ空席を作っておいた方がマシ、となります。

 

 

つまり「空いている施設をそのままにしておくよりは、変動費を補うだけの売上が見込めるのであれば稼働させて方が利益は上がる」というものが固定費への貢献の考え方です。

 

よく夜中はバーを経営しているものの、昼間はカレー屋などをやっているお店があります。バーは夜中から深夜まで開店していることがほとんどですが、昼間にお店を閉めていても1銭にもなりません。それよりは材料費などの変動費を補えるだけの売上が見込めるのであれば、昼間にカレー屋でもなんでも店を開けておく方が、家賃という固定費に貢献することができます。

 

 

固定費への貢献の事例

 

ここでいくつか「固定費への貢献」に関するビジネスの具体的事例を紹介します。

 

カラオケ屋のレンタルオフィス利用

 

カラオケ屋は夕方頃から学校帰りの学生で込み始めますが、平日の昼間は空いています。このまま空室にしておいても固定費への貢献はゼロです。そのため最近になって多くの店が、日中にカラオケルームをテレワークやミーティングのためのレンタルオフィスとして貸し出しています。

 

 

青山商事の駐車場

 

「洋服の青山」で有名な青山商事ですが、焼き肉屋やラーメン屋といった飲食フランチャイズ事業も行っています。洋服店と飲食店という一見なんの関連性もない業種ですが、主にロードサイドの大型店舗である洋服の青山に併設させて飲食店を出店し、お互いに駐車場をシェアすることで効率的な土地活用が可能としています。

 

ロードサイド店には駐車場が必要であり、これは固定費となります。しかし洋服店の来客ピーク時間は日中(14時~17時くらい)であり、それ以外の時間に駐車場を遊ばせておくことは固定費に対して貢献ができていません。

 

これに対して飲食店の来客ピーク時間は昼間もしくは18時以降で、洋服店のピーク時間を重なりません。そのためこの両店で共有された駐車場は効率的に活用されることとなり、それぞれ別に駐車場を構える必要がなくなり、固定費に対する限界利益の貢献を最大化することが可能となります。

 

 

akippa

 

固定費への貢献を可能にするプラットフォームを作ったのがakippaです。akippaは空いているスペースを一時的に誰かに駐車場として使用してもらうサービスです。事業所の空きスペースなどをakippaのサイトに登録しておくと、それを見たユーザーがそのスペースを駐車場として利用することが可能です。空いたスペース自体は何の利益も生み出しませんが、akippaを利用することでそこから収益を生み出すことが可能になります。

 

 

参考リンク:

akippa公式ホームページ

https://www.akippa.com/owner

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です