新規ビジネスのアイデア発想フレームワーク【早送りの発想】

元マッキンゼー、現ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏の著書『発想力:「0から1」を生み出す15の方法』(小学館新書: 2018)において、ビジネスにおいて新しい発想を行う際の様々な「型」が紹介されています。今日はその中のひとつである「早送りの発想(Fast-Forward)」について紹介します。

 

 

早送りの発想とは

 

早送りの発想とは、世の中のどこかで発生している小さな現象を自分の頭の中で「早送り」し、それが将来ビジネスにどのような影響を与えるのかを想像することで新規アイデアを得るものです。

 

著書ではソフトバンクの孫正義氏が紹介されています。1995年、まだまだ小さかった米Yahoo!社にいち早く出資し、更に日本で合弁会社であるヤフージャパンを設立しました。これはアメリカでの検索エンジンやポータルサイトの発展といった小さな兆しにいち早く目をつけ、これを日本に持ち込んで成功しました。

 

このように世の中の小さな変化に目をつけ、それが世の中に浸透することで将来どのような変化が起こるのか、それを想像してアイデアに結び付けるのが早送りの発想です。単に海外で流行っているものを模倣するのではなく、「その兆しを新発想に結び付ける」という点が重要になります。

 

 

スポーツジムの事例

 

コナミスポーツやセントラルスポーツといったスポーツジム施設は、運動をしたい(筋力増強、ダイエット、健康増進など)と考える個人がメインの顧客です。マシンジム・スタジオ・プール・温浴施設等の充実した設備を有します。健康意識の高まりから市場規模は拡大傾向となっており、成長市場であるといえます。

 

ここで今起きている小さな兆しについて考えてみます。YouTube等にはヨガなどの無料のレッスン動画がいくつも公開されています。またウェアラブル端末などにより個人で運動量の管理が可能になってきています。

 

こうした兆しによってどのような変化が将来考えられるでしょうか。

 

 

スポーツクラブに通う目的として、

1.専門的なマシンを使ってマッチョになりたい
2.適度な運動をして健康増進をしたい
3.痩せたい

 

といったことが考えられます。このうち1を目的とする人は実際にスポーツクラブまで通わないとどうしようもありません。専門的なトレーニングマシンを個人で購入するのは難しいでしょう。そのためゴールドジムのようなマッチョ御用達のスポーツジムはウェアラブル端末等の「兆し」による影響は大きくないと考えられます。

 

一方で2もしくは3を目的とする消費者は、YouTubeやウェアラブル端末を使うことで必ずしもスポーツクラブに通う必要はなくなるかもしれません。ウェアラブル端末を活用して自身でランニングをして運動管理をしたり、YouTubeでレッスン動画を見ながら自身で体操を行うことで健康増進や痩身といった目的を果たすことができます。

 

 

しかし自宅でひとりでYouTubeなどを見ながら運動をしていても、「自分が合った正しいトレーニングができているのか」「このトレーニング方法で間違っていないか」などの不安を抱える消費者も出てくるでしょう。そう考えると今後のスポーツジムの役割は「トレーニング施設の提供」から、「オンラインによるパーソナルトレーニングのコーチング」に代わってくるかもしれません。一人ひとりに合わせたオンラインでのトレーニングの提供、ウェアラブル端末での運動管理を通じて、健康増進やダイエットのサポートを行うことが今後スポーツクラブには求められるようになるでしょう。

 

 

このように「YouTube」「ウェアラブル端末」といった兆しが、将来のスポーツクラブのビジネスモデルに与える影響を考え、そこから新規ビジネスアイディアを考える。これが「早送りの発想」です。

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

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