新規ビジネスのアイデア発想フレームワーク【空いているものを有効利用する発想】
元マッキンゼー、現ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏の著書『発想力:「0から1」を生み出す15の方法』(小学館新書: 2018)において、ビジネスにおいて新しい発想を行う際の様々な「型」が紹介されています。今日はその中のひとつである「空いているものを有効利用する発想(Idle Economy)」について紹介します。
空いているものを有効利用する発想とは
空いているものを有効利用する発想とは、世の中のどこかで余っている人、モノ、時間などを見つけ出し、それを有効活用しようという発想です。いわゆるアイドルエコノミーというもので、特に近年は「空いているドライバー」を活用したUber、「空いている部屋」を活用したAirbnbなど、様々な空いているものとそれを活用したい人をつなぎ合わせるビジネスです。固定費への貢献と発想は似ていますが、固定費に限らず全般的に「空いているもの」に注目している点が相違点です。
著書では「日本には漁港が3000近くもあり、そのうち年間水揚げ高より港湾整備費の方が高い漁港が2000以上もある」と指摘しています。こういった漁港が有効活用されているかといえば必ずしもそうとはいえず、このように「既存の思考にとらわれずに広く空いているものを探す」ことからビジネスアイディアが生まれると指摘されています。
特に近年はネットを使えばこういった空いているものとユーザーを結び付けることは以前よりは容易になっています。UberやAirbnbなどはネットの力がなければビジネスとして成り立たせることは難しいでしょう。
一方、空いているものを有効利用するという点において大規模な設備投資が不要であり、大きな設備投資は必要ないため比較的新規参入が簡単な分野です。そのため競合の数が多く、この発想法で起業を考えるときはかなり斬新なアイデアでないとマーケットシェアを取るのは難しいかもしれません。
空いているものを有効活用する事例
ここでいくつか「空いているものの有効活用」に関するビジネスの具体的事例を紹介します。
スペースマーケット
スペースマーケットは、空いているスペースとそれを一時的に利用したい人をマッチングさせるサービスです。住宅、会議室、映画館、ホテル、カフェ、倉庫棟、あらゆる空いているスペースを貸し出し、そういった空きスペースをパーティー、写真撮影、会議、イベントなど様々な目的のために利用したい人とをマッチングしています。
こういった「空いているスペースを有効活用するビジネス」は既にかなりの事業者が進出しています。軒先.com、Sheeps、ちょい貸しスペースどっとねっと、Colabo Cafeなどがスペースマーケットの競合となるでしょう。そのため「会議室の貸し出し」「駐車場の貸し出し」「カフェの貸し出し」といったような特定のスペースに特化することで差別化する事業者も出てきています。
ココナラ
ココナラは空いている個人のスキルをとユーザーをマッチングさせるサービスです。デザイン、翻訳、動画作成、楽器の演奏、プログラミングといった個人のスキルを登録し、ユーザーと結びつけます。「マッチングアプリでモテる秘訣を教えます」といった日常生活のコンサルティング系から「各種調査データの統計解析を行います」といったビジネス系まで、様々な知識を販売することができます。
Bizseek、タイムチケット、ストリートアカデミーといったように、こちらにも競合が多数存在します。
ソーラーパワーネットワーク
ソーラーパワーネットワークは、工場や倉庫、店舗などといった大規模物件の屋上を借り、そこに太陽光パネルを設置するビジネスです。「屋上」という空いているスペースに太陽光パネルを設置することで収益化し、有効活用することが可能になります。
屋上を貸す側は使われていない屋上を貸し出すことで賃料収入を得ることができ、ソーラーパワーネットワーク側は大規模な土地を取得することなく売電収入を得ることができることができ、Win-Winの関係を気づくことができます。
モノオク
モノオクはスペースネットワークのように空いているスペースをマッチングさせるサービスですが、CtoCのビジネスとして自宅の空きスペースの倉庫として貸し出すということに特化しています。押し入れやクローゼットなどに空きスペースがある人は、これを貸し出すことで収益化することが可能となります。
Airbnbなどもそうですが、こうしたCtoCのビジネスは貸す方とユーザーの間のトラブルをいかに少なくし、信用度を確保するかということがひとつの問題となります。モノオクのようなサービスの場合は「個人がモノを安全に預かってくれるのか」、Airbnbの場合は「貸し出した部屋がユーザーに汚されてしまったらどうしよう」といった点をクリアすることが重要です。こういった場合は民間の損害保険会社を利用し、損害時の損失をカバーするような仕組みを作っている業者が多いようです。
- 鳥谷コロ助
へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。