新規ビジネスのアイデア発想フレームワーク【デジタル大陸時代の発想】

元マッキンゼー、現ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏の著書『発想力:「0から1」を生み出す15の方法』(小学館新書: 2018)において、ビジネスにおいて新しい発想を行う際の様々な「型」が紹介されています。今日はその中のひとつである「デジタル大陸時代の発想(Digital Continent)」について紹介します。

 

 

 

デジタル大陸時代の発想とは

 

個々のデジタル機器を島(デジタルアイランド)と見立て、これが近未来にかけて組み合わさって大陸となっていくイメージをデジタル大陸時代の発想と呼んでいます。

 

著書ではカメラの事例が挙げられています。フィルムカメラが登場したのが1880年代。それからおよそ100年後の1990年代にデジタルカメラが普及しはじめます。しかし2000年にカメラ付きの携帯電話が発売されて以降、カメラは携帯電話やスマートフォンの1つの機能となりました。いまやカメラを単体として使う人は少なく、日常的にはスマホのカメラを利用している人がほとんどです。

 

もし1990年代のデジカメが出始めたころに「5年後にカメラはどうなっているか」と考えたとしても、それを「携帯電話の1つの機能となる」と想像することは難しいでしょう。同じくDVDやブルーレイなどが出始めたころ、数年後にそれがストリーミング再生に取って代わられると想像することは難しかったのではないでしょうか。

 

このように個々の製品について「5年後にその商品がどうなっているか」と発想をしても、その製品の枠を超えた発想はでてきません。そうではなく「5年後のキッチンはどうなっているか」「5年後のリビングルームはどうなっているか」と言ったように、将来の生活やライフスタイルそのものを想像することで新しい発想がでてくると紹介されています。

 

 

Link Japan社のeLife

 

エアコン、加湿器、照明、オーディオ、カーテン、給湯器などのあらゆるリビング製品を、センサーやカメラを使いスマートフォンで一元的に管理し、条件に応じて自動で操作するサービスです。個々のデジタル機器を物理的に統合するわけではありませんが、スマートフォンを使って一元管理することが可能のなります。スマホで家電操作、明るくなったらカーテンを自動で開く、乾燥してきたら加湿器を作動させる、鍵の閉め忘れをスマホで外からチェックする・・・といったことが可能となります。

 

個々のデジタル機器において「エアコンの5年後はどうなっているか」「加湿器の5年後はどうなっているか」「照明の5年後は・・・」といったように考えても、こうしたアイディアは出てこなかったでしょう。そういう意味では家電メーカーや照明メーカーがこのような発想をするのは非常に難しいです。こうした企業で働く人たちはどうしても「既存の製品をどのように改良するか」という発想から出られなくなってしまうためです。エアコン事業部の人はエアコンをどうするか、加湿器事業部の人は加湿器をどうするか・・・というように考えてしまいます。

 

それよりも部門の垣根を超え「リビングルーム全体の将来をどうするべきか」といった大きな視点で考えることが、デジタル大陸時代の発想では重要になります。

 

 

キッチンの5年後を考える

 

それではキッチンの5年後を想像するとどうでしょうか。コロ助の家のキッチンを見てみると、食器棚、レンジ、オーブン、冷蔵庫、炊飯器、コンロ、電気ケトル、食洗器、シンクといったそれぞれ独立した機器が置いてあります。

 

それぞれの機器はこれまで独立して進化してきました。例えば最近の炊飯器は、スマートフォンと連動させて外からリモートで米を炊くことができたりします。でもリモートで米を炊くことにどれだけの意味があるのでしょうか?結局米を洗って水を入れて釜を炊飯器にセットするところまでは家にいるときに完了させておかなければならず、炊飯スイッチを押すところだけをリモートでやってもあまり消費者にメリットはありません。炊飯タイマーで十分だと感じている人は多いでしょう。「炊飯器の5年後」というような発想で考えてしまうと、どうしてもこうしたアイディアしか出てきません。

 

しかしこれを「炊飯器の5年後」ではなく「キッチンの5年後」を想像することで新しい発想が生まれてくるかもしれません。炊飯器や冷蔵庫、水道といったものが組み合わさった1つの新しい家電が誕生し、外から自動で「米を出し、洗い、水を足し、炊飯する」ということが可能になるかもしれません。これがさらに進化すれば、米を炊くだけではなく冷蔵庫の中から様々な材料を取り出して自動で調理、盛り付けまでし、自宅に帰ってくるタイミングで自動的に料理が出来上がっている、というようなことも可能となっているかもしれません。

 

このように個々の家電の未来ではなく「キッチンの5年後」を想像することで、デジタル大陸時代の新発想を行うことができるようになります。

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

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