コストリーダーシップ戦略とは?事例を挙げてわかりやすく解説します

コストリーダーシップ戦略とはなんでしょうか?今回はコストリーダーシップ戦略について

 

・どのような目的で使われるのか

・どのように使うか

 

解説していきたいと思います。

 

 

コストリーダーシップ戦略とは?

 

業界内で勝ち残るためには、その業界内で他社に対してなんらかの優位性を持たなくてはなりません。この業界内で競争優位を持つための戦略を事業戦略といいます。

 

この業界内での競争優位を持つための事業戦略には以下の3つがあると言われています。

 

事業戦略
・コストリーダーシップ戦略

・差別化戦略

・集中戦略

 

コストリーダーシップ戦略はこの事業戦略の1つです。その名の通り、商品やサービスを他社よりも安いコストで供給することで競争力の獲得を目指す戦略です。

 

他社よりも安いコストで商品やサービスを供給できれば、安い価格を設定することが可能になったり、同じ価格で売っても他社よりも高い利益を得ることができ、競争優位につながります。

 

では他社よりも安いコストで商品やサービスを提供するにはどのようにしたら良いのでしょうか。それには以下のような方法が考えられます。

 

 

規模の経済性

 

製造、マーケティング、流通、サービスなどで規模の経済が働く業種である場合、より大きな企業は小さな企業と比べてコスト優位を得ることができます。

 

例えば大型の機械の導入をすることで、製造工程を効率化してコストを下げることが可能になるかもしれません。

 

部品や材料を大量に購入することでサプライヤーに対する交渉力を増し、調達コストや安くなるかもしれません。

 

多くの従業員を雇用することで従業員をそれぞれ特定の仕事に専従させることで効率化させることでコストを下げることが可能になるかもしれません。

 

人事や財務、研究開発などといった間接部門のコストは大企業の方が相対的に安くなるため、小さな企業と比較して安いコストが実現できそうです。

 

 

このように、大企業は一般的に小さい企業と比較して低コストを実現できる可能性が高くなります。

 

 

学習曲線による経済性

 

学習曲線とは、その名の通り学習時間とその効果を示したグラフのことです。当然グラフは右肩上がりとなり、学習時間が長いほど成果は上がっていきます。

 

製造業やサービス業でも、長いこと同じビジネスを続けていくと段々と効率的に仕事を行うことが可能となります。製造工程が改善されたり、従業員が熟練することにより作業時間が短縮されてコストが下がることが考えられます。

 

 

技術上の優位

 

必ずしも歴史の長い大企業の方が新興の小さな企業よりもコスト優位であるとは限りません。小さな企業であっても、何らかの技術上の優位性を持っていればコストを下げることはできるでしょう。

 

例えば農業など、何十年も歴史のある大規模農家よりもICTやロボットといった最新のアグリテックを使ったスマート農業の方が生産効率が高いかもしれません。宅配サービスなども、ドローンなどのテクノロジーを使った新興企業の方が従来の配送業よりも安いコストを実現することができるかもしれません。

 

このように最新の製造技術、情報技術などのハードウェア、ソフトウェアを有する企業は、競合他社よりもより安いコストで製品やサービスを供給することができます。

 

 

生産要素へのアクセス

 

製造業であればなんらかの素材や部品を仕入れる必要がありますし、サービス業でも労働力や土地などといった資本が必要となります。こうした企業活動のために必要なインプット(生産要素)に対して安くアクセスできる企業は、コスト優位に立つことができます。

 

例えば実家が肉屋をやっていて安く肉を仕入れることができる人は、安いコストで焼き肉屋を始めることができるでしょう。学生街にある企業は採用コストをかけなくても絶えず労働単価の安い学生バイトを確保できるため、他企業に比べてコスト優位に立てるかもしれません。

 

 

コスト・リーダーシップの阻害要因

 

規模の不経済

 

企業の規模が大きくなればその分規模の経済が働き、コストを安くすることが可能であると述べました。

 

しかし一方で規模が大きければ大きいほどよいのかというとそうとも言い切れません。例えば企業はその規模が管理不能なほど大きくなった場合、規模の不経済が発生する可能性があります。

 

例えば規模が大きくなることによってマネジメントコストが増加する可能性があります。企業が大きくなると従業員も多様化し、その勤務管理や評価体制、目標設定、フィードバック、給与体系など、様々なシステムを整えて管理していかなければ従業員の不満が募ります。従業員が数十名規模であれば「阿吽の呼吸」でなんとかなっていた組織も、数万人規模になればシステマチックに管理しなければ公平性を保つことができません。

 

このように企業規模が大きくなることで管理コストの増加を招く可能性があります。

 

 

また、規模が大きくなることで従業員が専業化し、それが従業員のモチベーションの低下を招き、生産性が低下する可能性があります。

 

規模が小さい企業であれば従業員1人あたりの役割が広範囲にわたります。それは大変でしょうが、一方で複雑な仕事は従業員にやりがいを与え、従業員のモチベーションアップにつながります。

 

一方で企業の規模が大きくなると、効率化を目的として従業員の分業化が進みます。例えば製造業の場合、各ラインごとに従業員を配置して「その仕事だけを一日中行う」という従業員もいることでしょう。そうした場合は従業員のモチベーションが保てず、逆に生産性を低くする可能性があります。またつまらない仕事ですぐに従業員が辞めてしまい、その都度採用コストがかかるかもしれません。

 

 

コストリーダーシップの事例

 

アメリカのスーパーマーケットのウォルマートはコストリーダーシップ戦略を行っている企業のひとつです。

 

EDLP(Everyday Low Price)をモットーとし、余計な広告費をかけず、いつでも安い価格で商品の提供を心掛けています。スーパーマーケットという商品内容の差別化が難しい業界では消費者の意思決定は価格に大きく左右されるため、コストリーダーシップ戦略はこの業界では有効な戦略です。

 

ウォルマートは非常に巨大な企業であるため、仕入れ先である食品メーカー等への交渉力は強いものと考えられます。つまり規模の経済性が利き、調達コストが安く済むのです。

 

またウォルマートはそのスーパーマーケット業界での長年の経験によるデータの蓄積から、どの店でどのくらいの商品が売れるのかという需要予測を詳細に予測することができます。これは学習曲線による経済性のひとつであり、データに基づき需要予測を正確に行うことで在庫管理の最適化を行い、コスト削減につながっています。

 

ウォルマートはRetail Linkと呼ばれるシステムを通じ、サプライヤーは自社の製品がウォルマートのどの店舗にどのくらいの在庫があるのかをリアルタイムでチェック可能となっています。またそのシステムはロジスティックシステムともリンクしており、ウォルマートが所有するハブ&スポークシステムにより1日単位で配送量を調整することが可能となっています。これらは技術上の優位であり、やはりコスト削減につながります。

 

 

こうしたことによってウォルマートはコストリーダーシップ戦略の実現を可能としており、コストを押し下げることで他店より安い値段での販売(or他店と同じ値段でも高い利幅)を可能としていると言えるでしょう。

 

 

 

鳥谷コロ助
  • 鳥谷コロ助
  • へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。

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