価格差別とは?事例を挙げてわかりやすく説明します。
価格差別とはなんでしょうか?今回は価格差別について
・価格差別とは何か
・どういった効果があるのか
について解説していきたいと思います。
価格差別とは何か
一般的に、企業が消費者にモノを売る際、同一のモノであれば同一の価格で販売をします。ところが時に企業は全く同じモノを人によって異なる価格で販売することがあります。これを価格差別といいます。
どういったときに価格差別が起こるのでしょうか。ここで一つ例を挙げます。
あなたがとある人口130人の小さな村でラーメン屋をオープンすることにしました。開店まであと1週間、そろそろラーメンの価格を決めたいと思います。そこであなたはその村の人全員にアンケートをとり、ラーメン1杯どのくらいの価格であれば店に来てくれるか調査をしました。その調査結果が下の表です。
さて、こういったアンケートを踏まえ、ラーメン1杯いくらで設定した時にもっとも売上があがるようになるでしょうか。
もしラーメン1杯1000円に設定した場合、誰もお客さんは来てくれません。売上はゼロになります。
800円にした場合、100人のお客さんは来てくれそうです。売上は800円×100人=80,000円です。
600円にした場合、130人のお客さんがきてくれそうです。売上は600円×130人=78,000円です。
500円にした場合、130人のお客さんがきてくれそうです。売上は500円×130人=65,000円です。
こう考えると、ラーメン1杯800円に設定すれば最も売上が多くなりそうです。
しかし、実はもっと売上が上がる可能性がある価格設定方法があります。
先ほどのアンケートをさらに細かく分析した結果、「1杯600円であればお店に来る」と回答した村人のほとんどが学生だったということがわかりました。
ここであなたは学割価格を設定することを思いつきます。つまりラーメンの通常価格は800円とし、学生には特別価格として600円でラーメンを提供するのです。そうすれば売上は800円×100人+600円×30人=98,000円となり、売上は最大化します。
この学割価格が価格差別です。同じラーメンを、一般の人と学生とで別の価格で販売します。
ある製品やサービスに対して支払える許容額は消費者によってさまざまです。企業はすべての消費者に同じ価格でモノを売るのではなく、その許容額に近い金額をつけることで売上を最大化することができるという効果が期待できます。
それではいくつかの価格差別の例を見てみましょう。
価格差別の事例
チケットの直前割引価格
音楽ライブのチケットやスポーツ観戦のチケットなど、開始直前になってもまだ席が埋まっていない場合に割引価格で売り出すことがあります。
そのアーティストやスポーツチームの熱心なファンであれば、事前にチケットを定価で買うでしょう。
一方で、「まぁ観られれば良いけど高いチケットを買うほどではないな」と思っているそれほど熱狂的ではないファンも存在します。こうしたファンにチケットを購入してもらうために、もし直前になってもチケットが余っているときは割引価格でこうした消費者をとりこみます。こうして同じチケットであっても違う価格が設定される「価格差別」が発生します。
熱心なファンはどうしても生でライブを観たいため、もしかしたら直前になったら割引チケットが入手できるかもしれないと思いつつもそれを待つことはしません。もし割引を始める前にチケットが完売してしまい、ライブを観れなくなってしまっては元も子もないためです。
クーポン券
ファストフードなどではよくクーポン券を発行します。ハンバーガーが20円引きとかそういうクーポンをチラシに印刷し、それを切り取ってもってきたお客さんには割引をします。これも価格差別の一例です。
ここでのポイントは、「クーポンを入手するのには少し手間がかかる」という点です。
あまりお金を持っていない学生などはこうしたクーポンに敏感です。20円お得ということであれば、クーポンを切り取ってお店まで持っていく手間を惜しみません。
一方でお金に余裕のある社会人は、いちいち20円のためにクーポンを切り取ったりする面倒なことはしません。そのため価格差別が可能となります。
もし「20円割引してほしいです」と店頭でいうだけでハンバーガーが20円引きになるというキャンペーンを行った場合、これは価格差別の戦略としては失敗です。消費者に何の手間もかからないため、本来割引をしなくてもハンバーガーを購入してくれる消費者も割引の恩恵を受けることになってしまうでしょう。
クーポンを切り取らせたり、会員登録させたり、アプリをダウンロードさせるなど、消費者に何らかのひと手間をかけさせる必要があります。そうすることで「わざわざそこまでして20円引きかよ・・・」という消費者には高い値段で売ることができ、一方で安くしないと買ってくれない消費者には安い値段で売ることが可能になります。
ハードカバーと文庫本
新しい小説が販売されるとき、まずはハードカバーの本が販売され、その後数年してから文庫本が発売されます。例えば2005年下半期に直木賞を受賞した東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」はハードカバー版が2005年8月に出版され、文庫版が発売されたのは2008年8月です。
このハードカバー本と文庫本には大きな価格差があります。容疑者Xの献身の場合、ハードカバーは1760円、文庫版は770円です。
これはもちろんハードカバー本の方が製本にお金がかかるという理由もありますが、それ以上に価格差別の意味合いが強いものです。
その作者の熱心なファンは、高い価格を払ってもいちはやくその本を読みたいと思います。文庫版が出る数年間を待つことができません。
一方でそれほど熱心なファンでなければ、ハードカバー本は買わずに安い文庫版が出たときに購入するでしょう。
- 鳥谷コロ助
へぼい外資系リーマンです。英語はいまだに勉強中。TOEIC875点。Bond-BBT MBA。英語学習とMBAと資産運用についてのブログを書いています。平飼いの卵とフェアトレードを好みます。金持ち父さんになるために日々悪戦苦闘。面白いことと平和なことが好きです。
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